金融所得課税についての国際比較(高市早苗氏の発言をうけて)

先日、高市早苗議員が下記のような50万円以上の金融所得の税率を現状の20%から30%に増税したい旨の発言をして投資家の中では色々と話題になっています。

金融所得税制については、「逆進性」が大きい。不満は出ると思いますが、この時期には増税をさせていただきたい。

マイナンバーを活用して金融所得(配当所得と譲渡益)を名寄せして、50万円以上の金融所得の税率を現状の20%から30%に引き上げると、概ね3,000億円の税収増になります。2021年度(予算)の配当所得と譲渡益に係る財務省資料の数字を基に試算です。

そこで今日は諸外国ではどのような課税方式、税率になっているのかを比較しながら、どのように課税するのが良いのか考えていきたいと思います。

株式譲渡益について

財務省のウェブサイトに主要国の株式譲渡課税の概要というページがあります。

主要国の株式譲渡益課税は次のとおりです(財務省、金融証券税制、主要国の株式譲渡益課税の概要より、2019年1月現在)

主要国の株式譲渡益課税の概要を表した表

アメリカは国税の税率は3段階で445万円以下は0%、445万超4,910万円は20%、4,910万円超は20%が国税、地方税は州によって異なるようです。12ヶ月以下保有の場合は税率が少し高くなります。

イギリスは土地の譲渡益と合わせて171万円までが非課税で、504万円以下が10%、504万円超は20%の2段階です。アメリカより税率が低いとは驚きですね。

ドイツは10万円まで非課税でそれを超えると26.375%が原則のようです。

フランスは分離課税だけでなく総合課税を選択できるのが特徴で、分離課税30%、総合課税は17.2~62.2%となっています。

日本より税率が低いのはイギリス、高いのはドイツ、フランスですね。アメリカは地方税が良く分からないですので難しいですが、445万円以下なら日本の方が税率は低く、445万円超ならアメリカの方が高いと考えると良いと思います。

 

配当について

財務省のウェブサイトに主要国の配当課税の概要というページがあります。

主要国の配当課税は次のとおりです(財務省、金融証券税制、主要国の配当課税の概要より、2019年1月現在)

主要国の配当課税の概要を表した表

アメリカは譲渡益に対する課税と同じで、国税の税率は3段階で445万円以下は0%、445万超4,910万円は20%、4,910万円超は20%が国税、地方税は州によって異なるようです。

イギリスは29万円が控除されるようで、それを超えた部分について3段階の税率です。504万円以下7.5%、504万円超2,190万円以下32.5%、2,190万円超38.1%と504万円を超えると一気に税率が高くなります。イギリスは譲渡益は税率低かったのですが、配当が高額になると一気に税率が高くなるのが少し厳しいなと感じました。

ドイツは譲渡益に対する課税と同じで、10万円まで非課税でそれを超えると26.375%が原則のようです。

フランスも譲渡益に対する課税と同じで分離課税だけでなく総合課税を選択できるのが特徴で、分離課税30%、総合課税は17.2~62.2%となっています。

日本より税率が低いのはアメリカの445万円以下の場合、イギリスの504万円以下の場合でそれ以外は日本より高税率という事がわかりました。

 

望ましい税制は

株式譲渡益について

株式譲渡益については短期(1年以内)40%、中長期(1年超)20%などと少し税率を変えるのが理想だと思うのですが、毎月積み立てていた株を売却する時にどのように短期長期を判定するのか複雑になってしまうのが難点です。先に買った分を先に売るというのがわかりやすいですかね。

中長期について、もう少し高い税率でも良いのかもしれませんが、不動産の譲渡益は分離課税で税率は短期(5年以内)40%、長期(5年以上)20%ですので、バランスを考えると株の譲渡だけを高くすべきではないと思います。

配当について

私個人的な意見を言えば、理想は総合課税、現実的にはアメリカ、イギリスのような3段階くらいの累進課税がベターだと思っています。

不動産の賃料収入や事業を頑張ったりした人で所得10億円の人が55%、株の配当で10億円の人が税率が20%の現状はやはりおかしいと思います。

あまり税率を高くすると富裕層が海外に逃げるので、総合課税の税率も下げるべきだと思っています。

適当に切りよくシンプルに考えるなら、1,000万円以下20%、1,000万円超1億円以下30%、1億円超40%などはわかりやすいと思います。

投資をもっと活発にしたいのであれば、1,000万円以下10%、1,000万円超1億円以下20%、1億円超30%の方が良いですかね。総合課税の税率も現状の最高55%から40%くらいに下げたらそれほど不公平感もなくなると思います。

納税、確定申告について

証券会社が一つであれば3段階くらいの税率でも自動的に計算して確定申告不要に出来るのかもしれませんが、複数の証券会社に口座を持っている人が多数だと思いますので、マイナンバーとITを上手く活用して源泉徴収出来たらよいですかね。

確定申告はだれでも簡単に出来る時代になったので、無理に確定申告不要にするよりも、多めに源泉徴収して確定申告すれば還付を受けれるというような形に出来れば理想的かなと思います。

 

おまけ

自民党総裁の他の候補は

岸田さんも税率の壁打破として金融所得課税の見直しに取り組む考えを示し、河野さんも金融市場の配慮は必要としつつも増税を検討と言っています。

確かに現状は不公平ですが、増税して合わせるのではなく、減税して公平にしてもよいのですよ、と思います。

 

金融資産への課税はダメでしょ

一部の人は富裕層から財産の1%を課税して取るべきだなどいう意見も時々聞きます。そういえば高市早苗さんも言っていましたね。固定資産税という資産を保有するだけで課税されるシステムがあるのだから同じという理屈ですね。

しかし、現状金融資産への課税は完全に二重課税ですし、頑張った人が報われないダメな社会への道まっしぐらだと思いますので絶対に反対です。

 

関連記事です。金融所得課税については3年前にも同じような事を言っているのですが、今回は本当に変わるかもしれませんね。

 

2 件のコメント

  • 高額所得者に対する金融所得課税の増税については、大いに賛成です。
    ただし、一般国民の預貯金から投資への誘導を進めるためには、所得金額による累進課税とし、少額の金融所得に対してはむしろ減税すべきでしょう。それも、一気に税率を変更すれば、株価への影響が大きくなるので、5年から10年程度をかけ、毎年、1パーセントずつ変更していくべきだと思います。

    • 少額の金融所得に対する減税は賛成ですが、あまり複雑な税制になるのもあまり良いとは思いません。
      できれば高額所得者に対しても増税して不公平感をなくすよりも、総合課税を減税して総合課税にして累進課税にするなどしてほしいですね。
      どちらにしろ、与党も野党も金融所得に対しては減税は全く聞こえず増税しか聞こえないのは辛いところです。

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