iDeCo受取前に退職金を受け取っていた場合の退職所得控除

退職金(退職所得扱いになる確定拠出年金含む)を2回以上受け取る場合の税金計算に使う退職所得控除は下記のような短期間で退職金を受け取る場合に制限されます。

通常の退職金・・・・前年以内4年以内(5年以上間隔をあけると退職所得控除は満額使える)

確定拠出年金(iDeCo)・・・前年以内14年以内(15年以上間隔をあけないと退職所得控除は満額使えない)

自営業で退職金の受給時期をコントロールできる人は60歳でiDeCo、65歳で小規模企業共済、70歳で法人から退職金など退職所得控除を毎回満額使えるように調整できるのですが、最近流行りのFIREを目指している人は先に通常の退職金を受け取ってその後iDeCoを受取るという形になれば15年以上間隔をあけないと退職所得控除を満額使えないですので、非常に使い勝手が悪くなります。

それで、今回は退職金を受取って14年以内にiDeCoを受け取った場合の税金はどのように計算していくらかかるのかを説明していきたいと思います。

途中でややこしくて読むのが嫌になるかもしれませんので、簡単な結論だけを先に言っておきます。

結論・・・簡単シンプルに考えるのであれば、退職金を受取ってからiDeCoを受取るまでの年数に応じて退職所得控除を使えます、退職金受取時に退職所得控除を使い切っていない人の場合は退職所得控除を使った金額を年数に換算して余った年数分を加算する事ができます。

退職金の税額計算(基本)

退職所得は分離課税ですので、給与や事業、不動産などの所得とは合算せず別計算になり、退職所得だけで税金を計算します。

退職所得=(退職金収入-退職所得控除)×1/2

退職所得控除額の計算の表
勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (A – 20年)

出典:国税庁ウェブサイト

退職所得控除は20年迄は1年40万円、20年を超えてからは1年70万円です。

退職所得を求めた後に所得に応じた税額を計算します。

所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

出典:国税庁ウェブサイト

住民税は退職金の金額の大小に関わらず「退職所得×10%」です。

 

退職金受取後(異なる年)にiDeCoを受取った場合

①退職所得控除を使い切っている場合

具体例で説明した方がわかりやすいと思いますので説明します。

 

勤続30年の会社を退職して、退職金1,600万円が支給されました。

A社を退職時に退職所得控除は800万円+(30年-20年)×40万円=1,500万円ありましたが、A社の退職金は1,600万円でしたので、退職所得控除をすべて使い切って2.5万円程の所得税と5万円の住民税を納税しました。

5年後に15年間掛け続けたiDeCoが700万円に積みあがっていたので、受取る事にしました。

iDeCoの退職所得控除の計算は「iDeCoの加入期間15年の退職所得控除の金額」から「重複期間を勤続年数とみなした退職所得控除額」を控除します。

算式にすると

退職所得控除=(40万円×15年)-(40万円×10年)=200万円が退職所得控除の金額となります。

iDeCo受給時の退職所得金額=(700万円-200万円)×1/2=250万円

所得税額=250万円×10%-97,500円=152,500円

住民税額=250万円×10%=250,000円

 

補足

簡単にいうと非重複期間の年数の退職所得控除は受けれますよという事なのですが、なぜわざわざiDeCo加入期間で退職所得控除の金額を出して重複期間を引き算にしているかと言うと、iDeCoの加入期間が20年超になった場合に1年70万円の控除を使って納税者有利にするためです。

仮にiDeCo加入期間が21年で重複期間が16年(非重複期間5年)だった場合は下記のようになり40万円×5年=200万円より退職所得控除の金額は大きくなります。

800万円+70万円×(21年-20年)-(40万円×16年)=230万円

 

 

②退職所得控除を使い切っていない場合

 

勤続30年の会社を退職して、退職金1,200万円が支給されました。

B社を退職時に退職所得控除は800万円+(30年-20年)×40万円=1,500万円ありましたが、退職金は1,200万円でしたので、300万円控除を残しています。

5年後に15年間掛け続けたiDeCoが700万円に積みあがっていたので、受取る事にしました。

退職所得控除の計算上注意すべき点は「退職所得控除のあまりがあればその部分は重複していないと考える」その上で「退職一時金のみなし勤続年数」を計算してその年数を重複期間として計算する事です。(これがややこしい)

国税庁ウェブサイトからの引用です

【退職所得控除額の計算の表】

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A
20年超 800万円+70万円×(A-20年)

なお、次に掲げる重複期間がある場合には、本年分の退職手当等の勤続年数に基づき上記表により算出した退職所得控除額から、重複期間の年数(重複期間に1年未満の端数がある場合には切り捨てます。)に基づき上記表により算出した退職所得控除額相当額を控除した残額が退職所得控除額となります。

1 本年分の退職手当等が、前年以前にその支払者又は他の支払者から支払われた退職手当等の勤続期間を通算して計算している場合に、本年分の退職手当等の勤続期間と前年以前に支払われた退職手当等の勤続期間との重複期間

2 前年以前4年内(確定拠出年金の老齢給付金として支給される一時金の支払を受けた年分は前年以前14年内)に他の支払者から支払われた退職手当等(以下「前の退職手当等」といいます。)がある場合に、本年分の退職手当等の勤続期間と前の退職手当等の勤続期間との重複期間

なお、前の退職手当等の収入金額が、前の退職手当等の勤続年数に基づき上記表により計算した額を下回る場合には、前の退職手当等の勤続期間はその期間の初日から次表の算式により計算した数(1未満の端数は切り捨てます。)に相当する年数を経過した日の前日までの期間であったものとして、本年分の退職手当等の勤続期間との重複期間の計算をします。

前の退職手当等の収入金額 算式
800万円以下の場合 収入金額÷40万円
800万円を超える場合 (収入金額-800万円)÷70万円+20(年)

下から4行目なお以下が退職所得控除を使い切っていない場合です

B社からの退職金は1,200万円について「退職一時金のみなし勤続年数」を計算すると

(1,200万円-800万円)÷70万円+20年=25.7→25年(切捨ての方が納税者有利なので切捨て)

つまり、B社退職金の計算において30年分使えるのだが25年分しか使っていないという考えになり

重複期間を10年-(30年-25年)=5年として計算します。

退職所得控除=(40万円×15年)-(40万円×5年)=400万円が退職所得控除の金額となります。

iDeCo受給時の退職所得金額=(700万円-400万円)×1/2=150万円

所得税額=150万円×10%-97,500円=52,500円

住民税額=150万円×10%=150,000円

 

退職金とiDeCoを同じ年に受け取った場合

 

勤続30年のC社から退職金1,200万円、iDeCoが700万とした場合

上記のような場合、退職所得控除を計算する時の勤続年数は1991.4~2021.9の30年6ヶ月(31年)として計算します。(C社30年+非重複期間6ヶ月でも同じ)

退職所得控除(31年)=800万円+70万円×(31年-20年)=1,570万円

退職所得金額=(1,200万円+700万円-1,570万円)=330万円

所得税額=330万円×20%-427,500円=232,500円

住民税額=330万円×10%=330,000円

 

まとめ

私もこの記事を書いている時、ややこしすぎると思いながら作成していました。

今回試算して感じましたが、FIRE後にiDeCoを受取るという税制上不利な場合でも、金額がそれほど大きくなく今回の具体例のようなiDeCoが700万円程度なら退職所得控除が満額使えなくても税負担はそれほど大きくならないという事がわかりました。

細かい計算は難しいですが、iDeCoの所得控除はめちゃくちゃ有利です。受取時に少々課税されても拠出時の節税以上に課税されるのは、現役時の税率が低い場合やiDeCoが2,000万円以上積みあがった時などかなりのレアケースです。そもそも現役時の税率が低い場合は会社から受け取る退職金の金額も少ないと思いますのでiDeCoが少々積みあがっていたとしても高税率になる可能性は考えにくいです。

また、iDeCoは受取年を65歳まで任意に選べるようになりますので、退職金の金額が大きい人は年をずらして分離課税の超過累進税率を有効に使えばよいと思います。

課税所得が1,000万円を超えると税負担は大きくなりますが、月2.3万円のiDeCoでそこまで積み上げるにはかなりの年数が必要です。退職所得控除と所得を1/2にする計算方法はかなり税負担が軽いと実感しますのでiDeCoに加入できる人はぜひ加入しましょう。